首を絞めてもいい、と聞いた。

それに何も言わずに頷かれたので、そっと首に手を回した。


掌で包んだそれは、しっかりと脈打っている。

この薄い皮膚を破れば、赤が流れ出すのだろう。





指を這わせたそこは、熱かった。

思っていたよりも細くて、柔らかくて、嗚呼、この人は生きているのだ、と、実感した。




「…熱い。」

「…へえ。」




どく、どく、どく、と指の下で皮膚が上下している。

自分の爪がもう少し長ければ、きっとこの皮膚に爪を立てていただろう。





この指を絞め続けたら、目の前の彼を、自分のものだけにしてしまえる。

彼の最期の視線には、他の誰も映らない。






「殺したい。」

「…へえ。」



君を、とは言わなかったけれど、君は自分のことだと思ったんだろう。

いいよ、とでも言いたげに、少しだけ笑った。




ぐ、とさらに締めつけると、彼はそっと目を瞑った。








「黄瀬君。」



「黒子っち。」








殺したいんでしょ。


殺していいの。








呟いた言葉は、どちらの口から聴こえたのか。




アリアの慕情  
+++ いつか死んでよと、いつか殺してよと、いつまでも思えることを願っているの。