使われていない空き教室。 黒板は薄汚れていて、それでも誰も気にかけない。 錆びた教壇のすぐ横で、彼はひっそり、膝を抱えて座っていた。 これはシンパシーと言う名の、 からり、と窓を開けた。 生温かい風が入って来て、決して心地良いとは言えない。 積み上げられた段ボールの中に入っていた画用紙が、かさりと音を立てた。 まるでその僅かな音を合図のように、彼はそっと口を開いた。 「君は、どうして、ここに居るんですか。」 「ここに居たらいけない?」 「僕に、同情でもしているつもりですか。」 まるで水の様な薄い青をした彼の眸は、それでも水滴を落とさない。 そんな些細なことが、彼の生き様の全てを表現しているような気すらした。 彼からの問いに答えずにいれば、キ、と強く睨まれたものだから、まさか、と軽く返しておいた。 「なら、どうしてここに居るのですか。」 「…そうスね、」 そうスね、どうしてだろう。 「強いて言うのなら、共感しているのかもしれない。」 光から必要とされなくなった影に、 影に必要とされない、光の出来そこないを重ねて。 「きっと、同じ感情を、持っているから。」 眼が合わないことって、 届かない想いって、 報われないね、哀しいね。 (何よりも、寂しいね。) ただの、泣き事だ。 +++ 君を模した空に、そっと手を伸ばしてみたりするの。 (その日は、曇りだったから。)