「……おい黒子、なんか落ちたぞ?」

「え?………あ、」

部活終了の着替え中、ひらり、と黒子のカバンから何かが舞い落ちる。

それをひょいと火神が拾えば、黒子はそれを奪い取るようにして火神から取った。



「…見ました?」

「…見た。」


「……覚えました?」

「………まあ、うん。」

悪ィ、と火神が謝ると、いいえ、と黒子も返した。

他の人はもう帰ってしまって、部室には自分と火神だけ。

そう考えると、一度見られたならもういいか、と黒子は開き直り、それを自分たちの前に出して眺めた。


まだ色褪せてすらいない、綺麗な写真。




「……この真ん中の、お前だよな?」

「…ええ。」

指差された人物はアリスの恰好をした、水色のセミロングの少女。

周りにいるのは、どことなく見覚えのある人物ばかり。



「で、これが黄瀬で、緑間で、青峰で、紫原にあのマネージャー…、あとの一人は、誰だ?」

火神が順に指を指しながら名前を言う。

そうすればひとり、見覚えのない人物が居る。



「これは赤司君です。キセキの一人、キャプテンだった人ですよ。」

「…へえ…。」

まじまじと火神はその写真を見ると、今度は興味深そうに黒子を見た。




「………で、お前ら5人はなんでこんな恰好してんだよ。」

「…………ちょっと、こう、商品に釣られまして…。」

「……おいおい…。」

「でも僕、優勝したんですよ?」

ホラ、商品持ってるんです、と黒子が写真の中の自分の手元を指差す。

それに火神は、まじでか、呟くと、写真と黒子を見比べた。



「…あんまり見ないでもらえます?」

「あ、いや、お前ほとんど中学から変わってねえから、多分今でも違和感ねえんだろうなと…。」

「変わってないと言うのが身長の話なら火神君ぜひぶん殴らせて下さいね。」

「いいいいいやいやいや待て!」

ぐ、と右手を握りこんで振り上げた黒子に、火神は必至で両手を顔の前で振った。

それに黒子は、気にしてるんですよ、と呟いて拳を降ろした。




「…でも他の連中は突っ込みどころが見当たらねえほど、その、アレなのは何なんだ…。」

「あ、でも黄瀬君は準優勝です。」

「マジか!」

「だって最終選考が僕ら5人しかいなかったですから…。」

それなら妥当だと思いませんか?と言う黒子に、それならそうか、と火神は納得した。

顔立ちが綺麗なだけあって、頑張って見ればそれなりに見える。

頑張って見れば。




それでも黒子は、柔らかい手つきでその写真をゆるりと撫でる。

その光景を見て、火神はポツリと呟いた。



「…お前、楽しそうだよな。」

「……え?」

「いや、この時のお前。」

表情こそはいつもの無表情と大差ないけれど。

それでも分かる。



「楽しいって、感じ、する。」

火神も先ほどの黒子の様に、ひどく優しい手つきで写真に触れる。

火神と自分の手が左右に置かれた写真から、なぜか黒子は目を離せないでいた。


そして黒子は、ゆっくりと水色の眸を伏せると、ええ、と返事をした。


「そう、ですね。」




とても、楽しかった。











たいせつでだいすきな君たち。


いつかまた、一緒に笑おうね。










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火神が赤司を知らないのは、赤司さん登場前に書いたものだからです。




(5/5)