右手にケーキ。 左手にプレゼント。 そんなものの入った箱たちで両手を埋めて向かうのは、十数年前の今日に生まれた、愛しい愛しい恋人の家。 黒子の両親が出かけているのは既に調査済み。 そして彼は、何度言っても鍵を掛けないことも知っている。 (彼曰く、鍵なんて寝るときに締めれば良いでしょう、だそうだ。) (そう言うわりに、夜にすら鍵を掛けて居ないことなんかザラにある。) そんなわけで、玄関のドアを遠慮なく開け放つ。 「黒子っちー!はっぴーばー…ぁ…?」 玄関に置いてあったのは、一枚の紙。 内容は簡潔に3行のみ。 テツはあずかった 返してほしくば、探せ ゆうかい犯より 「………えーと、」 この時黄瀬の頭の中に浮かんでいたことは、「黒子っちが浚われたどうしよう!」などという困惑の感情ではなかった。 漢字くらい携帯で調べてから書こうよ、とか。 返して欲しくば身代金を払え、じゃないの、普通は、とか。 探せってどうよ、探せって、とか。 誘拐犯って自分の名前は隠している癖に、「テツ」って書いてる時点でこれを誰が書いたか丸わかりだから、意味ないから、とか。 まあ、とりあえずひと言で言うのならば、 なにしてくれちゃってんの、という、感情でいっぱいであった。 神様って、本当にロクデナシだと思う。 だってそうでなきゃ、こんな世界に人を造ったりしないだろう? 「…ほんっと、あの人らは何してくれてんの…。」 この紙を置いて黒子テツヤを連れて行った人物には、そりゃあもう心当たりがあった。ありまくりであった。 青と赤の髪を持つ、対照的な、それでも良く似通った二人。 黒子の信頼を羨ましいほどに集めている二人である。 大方、青峰が面白がって実行し、火神はそれにわけもわからず付き合わされたのであろう。 大体はそんなところだろう。うん。 あの二人はわかりやすい。 でも、まあ、探さないと愛しの恋人に逢えないと言うのなら、 「探してみせましょうってね。」 さあ待っていて。 今から君を迎えに行くよ! → (1/10)