「……っつっても、まあ、今の時代には便利なモンがあるわけで。」 玄関に立ったままもそりとズボンのポケットに手を入れれば、文明の利器携帯電話。 恋人の電話番号を発信履歴(着信履歴ではない)から見つけてかける。 数回のコール音の後、ぶつりと切れた。というか切られた。 「…えー、うっそ。」 じゃあ次。 まあ、赤い方でも青い方でもどっちでも良いんだけど、電話帳の順番的に後者で。 そんな本人たちに聞かれたら殴られそうなことを考えながらも、電話を耳に当てる。 そうすれば、電話を切る以前に、携帯の電源ごと切られているらしい。 もう一方にかけてみても、結果は同じ。 「……こりゃ、本格的に、探せってことか…。」 まじスか、と口からするりと出てきた言葉とは裏腹に、少しばかり高揚している自分が居たことに気がついた。 「黒子っち、荷物、家に置かせてね。」 今は居ない家の住人に断って、下駄箱の上に箱をふたつおいた。 そして玄関を締め、周りに人が居ないことを確認してから、植木鉢の下に隠してあった鍵で、ドアに鍵を掛けた。 前に黒子から、普段はココに隠してあるから、用があるときはこれで開けて入ってくれと言われていたのだ。 そうは言われても、いつもなぜか開いている玄関に対し、使ったことは今日が初めてだ。 かちゃん、と鳴った音は、このゲームの開始の合図。 さあ、ゲーム、スタート。 → (2/10)