「………いない…?」

窓の外から見た限りだと、店内に彼らの姿はない。

彼一人だったら、居たとしても見逃してしまう可能性が大の為、あの二人が一緒に居ると言うのはとても助かる。


だって、目立つのだ。

どちらか片方でも目立つのに、二人いたら余計に。

狭い店内で見つけられないはずがない。



「じゃあどこだろ…。」

学校かな、と思ったものの、今更ながらに今日は平日。

こんなことをしているのだから、彼ら3人は、おそらく学校に行ってはいないのだろう。


まったく、ちゃんと行かなきゃ駄目っスよ。

そんなことを思っている黄瀬は、もちろん自主休校の真っ最中だ。



まあそれはいいとして、


「火神っちの家は、オレ、知らないし…。」

本人に聞こうにも、携帯の電源が落とされてしまっているのでは、連絡の取りようがない。

まあ恐らく、オレが知らないことは知ってくれているはずなので、火神の家ということはないだろう。


残るは青峰の家。

中学時代、連絡網として教えられていた自宅の電話番号。

それを携帯で呼びだすと、何の躊躇いもせずに掛けた。

数回のコール音の後、聴こえたのは女性の声。

恐らくは青峰の母親だ。


大輝君居ますか、と言い慣れない名前を聞けば、今日はもう学校に行ったはずだけれど、との返事。

それに適当に繕って礼を言えば、いえいえと母親らしい声が返って来た。



つまり、青峰の自宅も火神の自宅もハズレだ。





「…うっそーお。意外に難しいぞコレ。」

考えれば考えるほど、それに全てバツがついて行く。


あんなところも一緒に行ったっけ、

あんなこともあったっけ、

ああ、そういえばあんなこと言われたなあ。

記憶を呼び覚ませば、そんな懐かしい、思い出となるにはまだ早すぎる記憶が蘇る。


それでも、今回彼が居るはずの場所は、どこにも当てはまらない。


「長時間いても不自然ではない屋内ってところが、ポイントっスよね…。」

そうやって改めて考えると、なかなか無いもんだなあ。

そんなどうでもいいところにまで思考が飛ぶ。





それでも、黄瀬はひとつ、はたりとまばたきをすると、玄関に置いてあった紙をポケットから取り出した。

それを上から下までじっくりと眺めると、微妙な表情が隠せ切れない。







「…まさか、ね…。」




呟いた言葉は、傍で車が通った音でかき消された。












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