「お待たせ、黒子っち、火神っち。」

「遅いですよ。二人で何をしていたんですか。」

「ちょ、その目止めて。なんもしてないからマジで。」

「つーかオレだってコイツ相手にはなんもしたくねえわ。」

「すみません。青峰君にだって選ぶ権利はありますよね。」

「あっれ、ねえ、黒子っち。オレへのフォローは?」

ねえねえ、と詰め寄っても、彼からは返事はもらえない。



諦めて、とりあえず、はい、ケーキと箱を差し出した。


そう言って渡せば、向けられていた蔑んだ目は、一気にきらきらという音まで突きそうなほどに輝いた。


なんてゲンキンな。

そんなところが可愛すぎる。



「ケーキ…!」

「うん、ケーキ。皆で食べようね。」

ね、と言ったら、火神と青峰が、え、と声を漏らした。


「何、二人とも、甘いの苦手っスか?」

「いや、別に苦手じゃねえけど…。」

「オレたち、今帰ろうと思ってたし…。」

青峰の言葉を火神が継いで言えば、黒子は即座にふたりの腕を思い切り掴んだ。

わし、と掴まれた服は、いっそ伸びてしまいそうだ。



「ちょ、黒子…。」

「テツ?」

二人がそっと黒子を覗きこめば、キ、と鋭い視線が二人に向けられた。




「…二人とも、今日は一日、僕にくれるって、言いました。」

「………いや、でも、黄瀬も来たし、」

「オレら、邪魔じゃ…。」

「邪魔なら最初から頼みもしないし呼びもしません。」

途端に顔を歪めた黒子に、体格の良い男二人がオロオロとしている。


なんて面白い光景だ。



黄瀬は、少し離れた場所から見て、そんなことを考えていた。

でもまあ、そんなことを思っていても仕方がないことなわけなので仲裁に入ろうと思います。はい。





「いいじゃないっスか、皆で祝おうよ。」

ケーキ、ホールなんスよ。

オレら二人で食えるわけないんだから、手伝ってよ。

この後に用事があるわけじゃないんでしょ?



ね、と二人が持ちかけていた上着を没収すると、二人はすとんとその場に腰を下ろした。

うん、素直でよろしい。




「じゃ、僕、お皿とか持ってきますね。」

黄瀬君、手伝ってもらえませんか?




そう言われて、もちろん了承すれば、黒子は満足気だ。










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