「……そういえばオレたち、結局普通の恰好で回ってねえなあ…。」

帰り道、ぽつりと青峰が呟いた。


「普通の恰好のが良かったですか?」

「そりゃまあ…。」

「でも、楽しかったでしょう?」

聞いてはいるが、どこか確信めいた黒子の声に、青峰は笑って黒子の頭を撫でた。

ああ、こいつには敵わない。


「…ま、そういうことだからいいか。」

な、と言えば、でしょう、と返される。

今日こいつの表情が柔らかい気がするのは、きっと気のせいなんかではない。




「黄瀬―、黒子が浮気しているのだよ。」

「ちょぉお青峰っち!黒子っちの隣はオレの場所っス!」

「えー、今日黒ちんと一番一緒にいたのはオレだもんー。」

「…あの、皆さん離してください。」

腕やら頭やらを掴まれるわ体重をかけられるわ、黒子は直に自分が潰れるんじゃないかと頭の片隅で考えた。

もしも自分の体が紙で出来ていたら思い切り破けていたのだろう。



「…重いです。」

「ホラ黄瀬重いだとよ、モデルが重くちゃ駄目じゃねえの。」

「いやいやいや今一番黒子っちに体重掛けてるの紫原っちっスからね。」

「ちがうよ青ちんだよ。」

「お前ら全員なのだよどう見ても。」

「いや緑間君、君もですよ。」

そうだそうだ、と緑間に声が集まり、耳元の声はいっそう騒がしい。

それでも黒子は、ぎゃあぎゃあと騒ぐ4人の好きにさせておいた。


触れた個所が暖かかったからだ。






「……ま、いいですかね。」


楽しかったから。

小さな呟きとともに微笑んだ黒子を見ていたのは、もう既に落ちかけていた太陽だけだった。











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