パズルのピースがまたひとつ、ころりと落ちた。

足で踏めば、そのピースには泥が付いたようだ。

足元を見下ろせば、泥のせいでピースの色が分かりづらくなっていた。





「それをわたして。」

こちらに手を差し出して言う彼に、どうして欲しいのですか、と問うた。



「だって、汚れてるから。」

「汚せばいいじゃないですか。」

「綺麗にしなきゃ。」

「どうして綺麗にしなきゃいけないんですか。」



パズルのピースは未だに僕の足の下。

もう一歩進めば、あと2、3枚は汚すことになる。





「綺麗にしなきゃ。」


そう言った彼の視線は、僕でもピースでもない、宙を見ていた。