よく笑いますねって、言ったことがある。 一瞬だけ彼は視線を外すと、そうスね、と眼を瞑って言った。 それに、楽しいですか、と聞いたら、楽しいよ、と言われた。 彼は、分かりやすいようで分かりにくく、その実とても分かりやすい。 よく女の子たちから恰好いいと騒がれているけれど、実際よくわからない。 だってあの人はあんなにも可愛くて、あんなにも恰好悪いのに。 女の子たちの輪の中で笑って笑って笑う彼は、自分の知っている彼の中で、変な顔ベスト5には入るだろう。 授業中は真面目に授業を受けているところを見たことがない。 何とはなしに窓の外を眺めたり、真面目にノートをとっているかと思えば、大抵落書きをしている。 そんなだからテストの結果は悲惨なことを本人を分かっているのだろうが、認めたくはなのだろう。 誰だって勉強は嫌いだ。 携帯でやたらと写真を撮られたものだから、鬱陶しくなってその顔に教科書を押し付けた。 理由を聞いたら、お守りにするんだ、と言っていた。 何の、と聞いたら、ヒミツ、とウインク付きで返ってきた。 それにイラッときたので、君は肖像権というものを知らないのですか、と無理やりそれを奪って削除しておいた。 本物がいるんだからいいでしょうが。 ヘッドフォンで大音量で何かを聴いていたものだから何かと思って耳を澄ませば、どう聴いても雑音だった。 それにそのヘッドフォンを奪ったら、目をぱちくりされた。 何も言わずにそのまま見下ろして居れば、ちゃんと聴こえるよ、と言われた。 大事な音だけは、これを突き抜けて聴こえるから、と。 色々とあり得ません。 僕を好きですか、と聞いたら、とても、と返された。 良い笑顔がやたらと腹立たしかったので、つむじをぐりぐり押してみた。 身長縮め。もしくはよこしなさい。 → (2/5)